自律学習者の育成は英語教育でも長年のテーマだと思いますが、一筋縄ではいかないなということを痛感しています。日常生活で英語を使わなくても生きていくことができる日本で、目的意識をもたせて英語学習に向かわせるために、教師である自分に何ができるのか?ということをしばらく考えています。その中で、生徒へのアプローチやこれまでの取り組みで改善してみたことを記録しておきます。
家庭学習や自学ノートの取り組みの状況
授業の冒頭にLast Sentence Dictationを続けているので、少なくともその対策はするように設定してはいますが、「小テスト的なものが授業の冒頭にあるから家庭学習をやる」という気持ちになる生徒は本当に限られてきました。Last Sentence Dictation対策だけでなく、自学ノートの様々なレベルでよい取り組みは増えてきていますし、それをGoogle Classroomで全体に共有してほめてあげると、マネをしたり反応をしたり新たな取り組みをする生徒も現れます。ただ残念ながら、苦手意識のある生徒たちの動機付けにはなっていません。強制されるわけではないので、何も家庭学習せずに授業に臨む生徒が増大してきました。
こんなこと増えてきてない?
最近の印象ですが、「覚える」ということを極度に嫌う生徒が数年前よりも圧倒的に増えてきたなと思います。幼少期からインターネットに触れていて、調べればあらゆる情報が手に入る世代です。暗記の必要性よりも、情報活用の能力が求められているからでしょうか。授業やテストで「そういえば前にやったな…」「もっとやっておけばよかった」などの気持ちに導いたからといって、粘り強く取り組んで「徹底」していく生徒がそこまで増えるわけでもありません。いろいろ職員室で話をしていると、英語だけに限った話ではなさそうで、学校としての取り組み、小学校との連携などにも課題はありそうです。小学校英語で既習とされている英単語の多さも関係しているのでしょうか。
生徒の目的意識として頼みの綱であった高校入試。競争倍率は減る一方で、「何とかなるでしょ」という声もチラホラ聞こえます。もっと将来に向けての夢、英語学習の必要性、英語学習の楽しさ・喜びなど、学ぶことを動機付けできる目的が求められます。
生徒の声を直接聞いてみると、「習い事や部活動で疲れている」「甘えている」「ゲームやネットをしてしまう」「やっていなかったら居残りにしてほしい」「先生に決めてほしい」など、自律どころではなく他律の段階にある生徒が浮かび上がってきました。
そこでやってみた①
【自律学習者を育成するために】
夏休み前の数時間は、生徒一人ひとりと学習カウンセリングをしました。自律学習者の育成にむけて、「生徒との対話」を通して「目標と学習方略の自己決定」をさせました。このようなワークシートを作成する過程で、相談にのりながら背中を押してあげました。
参考にしたのは以下の本です。
夏休み中の取り組み具合はというと、1〜2割くらいの生徒は目標に向けて期間中を通してがんばれていた様子です。大半の生徒が終盤にかけて頑張り始めるという結果でした。目標設定や自己調整する経験不足の生徒たちが多く、今後も定期的にカウンセリングしながらサポートしてやる必要がありそうです。
そこでやってみた②
【他律(強制)の先に自律がある】
自学といえば田尻悟郎先生ですが、このように言われています。
生徒が自学に取り組むようになるためには、いくつかポイントがあります。
1.成績のつけ方が明らかになっている
2.進度表やスティッカーなどを用意する
3.一つひとつの学習の目的や意味を理解している
4.伸長感がある
5.教師の手書きのコメントがある
Talk and Talkでのドリル学習をベースとしており、そこで培った力を使ってクリエイティブな取り組みを選択し自学できるシステムであると理解しています。つまり、明確に成績に連動することが説明されており、「自学」といえども多くの生徒にとっては強制力が伴うと思います。
現状の自分自身の自学システムは「やったほうがいいが、やらなくても何とかなる」という感じを与えてしまいます。Talk and Talkを使っていないので、「既習の教科書本文とLast Sentence Dictation」を使った学習をベースとして、「必ずやらねばならないこと」と「自分で選択できること」に再整理しました。また、苦手意識のある生徒には自由度の高さが、学習への取り組みにくさになっているようです。「何をすれば良いか分からない。できない。」ということを解消するべく、新学期はじめの授業で明確に説明できるように、内容とシステムを見直しています。詳しくは以下のページに新たに追記しています。
大切なのは動機づけ
悩んだときは田尻悟郎先生のDVDを見てしまいます。先日はこれを見ました。
見るたびに新たな発見があります。ビデオの最後にはこのようにおっしゃていました。
一番大切なことは、まず子どもたちの気持ちを掘り起こすための動機づけをすることです。それから目標にたどり着けるためのスモールステップを踏んであげること。こういうことができるために、こういう段階を経ていくよっていうことを子どもたちにわかってもらうこと。子どもたちが、「よし、じゃあやりたい!」となったときに、子どもたちはすごい力をもっていますから、いくらでもできるようになると思います。
目の前の生徒たちにあわせて、自分にできることを整理してみました。
- 家庭学習とLast Sentence Dictationで「わかった!できた!」を感じさせて動機づけ
- 家庭学習にうまく取り組めない生徒には放課後の学習会でしっかり寄り添いながら、人間関係づくりからの動機づけ
- ALTに協力してもらいながら、昼休みや放課後などに生徒が一対一でコミュニケーションをとる喜びを感じさせて動機づけ
- 単元のゴールに向かってバックワードデザインで学びを積み重ねることができる授業で動機づけ
いくら教師が頑張っても、きっとそれらは「動機づけ」に集約されていくのだと感じています。力をつけてもらうには、生徒自身に頑張ってもらうしかありません。子どもたちの成長に期待しながら、教師としてできることは、とことんやってみようと思います。
今後、しっかり勉強したいこと
「動機づけ」「モチベーション」だけでなく、最近では「エンゲージメント」ということが大切なようです。購入している本を読んで、もっと勉強したいです。
追記(2023)
新課程から、Talk and Talkを使わずに授業を展開してみようとしていたのですが、2年目の終わりから必要性を感じて、改めてTalk and Talkを使い始めました。これによって、自学ノートのレベル3の取り組み内容が増えることになりました。それについてはこちらに記録しています。