新課程2年の振り返り(2022)
新課程の2年間が終わろうとしているので、ここで振り返りを。個人的には、現行学習指導要領の「コミュニケーションの中で実際に使いながら学んでいく」という考え方はとても好きで、言語活動のあり方や設定の工夫について学ぶことがたくさんできました。また、以前とは違う視点から生徒たちや自分自身を見ることができるようにもなってきたと思います。
生徒たちの現状は?
では生徒の現状はどうなのか?というと・・・。
- 英語でのコミュニケーションに前向きに取り組める
- 目的や場面・状況をもとに、相手意識をもって内容、構成、表現を考えようとしている
- ペーパーテストで、目的や場面・状況のある作文課題に対して、ある程度の分量で応じることができる生徒が増えた
- 上位層の生徒たちの伸びは非常に大きいと実感
- 低位層の生徒が増えて二極化が進んだ(文脈の中で知識・技能を生かせない)
以上のことから考えると、現行学習指導要領をもとにした自分なりの実践を続けながら、全ての生徒たちの力を底上げするような取り組みが必要であると考えています。特に、自分の生徒たちの県学力状況調査やペーパーテストの結果を分析していくと、「文脈の中で文法の形式判断や語彙の選択をする」という力が弱いということが分かりました。つまり、文法規則を詳しく説明できたり、日本語をもとに英文を作ったり、単語の日本語の意味を記憶しているだけでは不十分で、しっかり英語の文脈の中で「生きて働く知識・技能」が育っておかねばならないということです。多くの生徒が、「思考・判断・表現」に到る以前のステージで立ち止まって、もがいているのだろうと思います。
知識だけでなく技能を身につけるために?
では、彼らのために何ができるのでしょうか?この2年間は、教科書以外に準拠ワークを1冊だけ購入して、その使い方や効果を改めて考えてきました。各出版社からたくさんの準拠ワークが出版されています。しかし・・・
- 文法規則を理解、日本語をもとに英文づくり(語順・和文英訳)、単語の日本語の意味を記憶といった問題が多い。
- 生徒のつまずきを把握しきれず、やらせっぱなしになりがち。
- 自学ノートや赤シートで何度も繰り返している生徒たちが、ペーパーテストで力を発揮できていない。
という実感があり、準拠ワークは「知識」を理解するためには有効だとしても、「技能」を身につけるには別の方法が必要だという結論に至りました。だからこそ、先に述べたことと重なりますが、現行学習指導要領の「言語活動」で実際に運用させながら「知識・技能」を身につける機会を充実させるべきだという考え方には納得がいきます。そして自分の実践の中では、「言語活動」の前に、幅広いレベルの生徒たちをフォローアップしながら「技能」を高めるために、力のつく「練習」が必要です。
以上のことを踏まえると・・・
- 英語の文脈の中で形式判断をしたり、言語材料の意味や機能を理解できる
- 生徒のつまずきを把握してアドバイスを与えられる
- 生徒が「できる」状態まで繰り返して取り組める
- 機械的な部分だけでなく生徒が楽しんで取り組める知的な部分もある
- 本当にできるようになったか、さまざまな技能で証明できる課題がある
- コミュニケーションの中で生きる程度に自動化が進む
などの要素を満たすことができる教材としては、田尻悟郎先生の「Talk and Talk」が最も適していると再認識しました。結局、紆余曲折を経て原点に戻り、年度途中から生徒には購入してもらいました。
副教材①:Talk and Talk
田尻式で何とか時間を捻出して、教科書をもとにした言語活動を中心にしつつ、Talk and Talkで新出文法の練習をしていきます。
- 授業の中で文法説明と数問の口頭練習
- 家庭学習で自学ノートレベル3(加工)で書いて練習
- 空き時間に教師が赤ペンチェックとコメント記入をがんばる
- 家庭学習で改めてやり直して提出してマルをもらう
- 自分でTalk and Talkの背表紙のシートに進行状況を記録
- 授業冒頭の帯活動の中で、すでに学習済みのパートで、時間を計りながらペアでスピーキングテスト練習
- 自信がついた生徒は、英語科の先生を見つけてスピーキングテストに挑んで、合格してサインをもらう
- ノートやスピーキングの取り組みは、知識・技能のポイントとして評価資料として扱う
以前はスピーキングテストの合格基準は記載されていませんでしたが、改訂版には全て載っているという親切設計に驚きました。(田尻悟郎先生マニアの自分は研修会や書籍、DVDなどで情報をかき集めて、頑張って自作していましたが、今ではその苦労は必要ありません!)
田尻悟郎先生の教え方は、Talk and Talkの内容と完全に合致しています。そのスタイルを模倣することを目指してやってきた自分にとっては、久しぶりにTalk and Talkを使ってみると、これまで生徒とやってきたトレーニングを生かしやすくて、最高にやりやすいです。田尻悟郎先生の教え方のいくつかは、他の記事に実践記録をまとめています。
副教材②:たてよこドリル
Talk and Talkはかなり頭を使うドリルが多いため、基本的な文を多くインプットし、口頭練習、筆記練習ができるように、正進社のたてよこドリルも採用しています。(正進社が好きすぎますね…)
副教材の活用:To Do Listの作成
以下のようにTo Do Listを作成して配布しています。
- 各自で自学ノートで取り組む際に、学習記録をつけることができるようにしています。(自分ができるようになったと思ったタイミングで各自サインする。)
- さらにTalk and Talkは教師と1対1のテストをする時間を捻出して、合格したらサインをする欄を設けています。(実際に成績に入れるのはこの合格サインのみです。)
- 生徒には以下のように評価基準を示して、知識技能の評価資料の1つとして算入します。
評価A:先生サインが〇つ以上
評価B:先生サインが〇つ以上
評価C:先生サインが〇点以下
基本的には教師によるテストにしていますが、中1の初期などは以下のように生徒同士のテストにすることもしていました。
2年後の感想(2024)
2年が経った今、実践例も追記しながら、現状を振り返ってみました。副教材を準拠ワークではなくしたことで、たくさんのメリットが感じられます。
- 授業でやったことを家庭学習でそのままできる
- 家庭学習でやったことが授業で生きる
- ワークに書いて満足でなく、実際に生徒が「できる」まで見られる・フィードバックできる
- 評価に直結している
- 英語の文脈の中で形式判断する練習ができる
- 定期テスト後に準拠ワークを回収など不要。日々の自学をがんばることが全て。
- 定期テスト勉強は、いつもの教材で、いつもの勉強をしていけばよいと言い切れる。(特別なことはさせる必要がない)
他の教科は、テスト後の提出物がたくさんあるようで、生徒は英語のテスト勉強について、先ほどの6と7の事実を知り、拍手をしてくれました。日々頑張る生徒が伸びていき、実際に自信をつけることができるようにしていきたいと思います。
参考書籍