仮定法過去の導入について記録しておきます。この3年生は1年時は旧課程の教科書だったため、文科省のBridgeが配布されています。仮定法の使用を想定した題材がいくつか含まれており、生徒も興味をもって考えることができそうであったので、ここで活用してみようと思いました。
指導する上で大切にしたいと思ったことは以下の通りです。
- Teacher TalkやS-S Interactionを通して、文脈のある中で新出言語材料に出会い、その意味や機能、使用場面などを捉えることができるように。
- 実際のやり取りの中の、仮定法を使用した文を取り上げて板書し、例文として提示していく。
- 既習事項との使い分けに気づけるように、トピックや板書を仕組む。
- 文部科学省のBridgeを用いて、やり取りの内容と近いトピックでの言語活動を通して文法使用を促す。
指導の流れ①(S-S Interaction)
この授業は3学期スタート一発目の授業でした。そこで、お正月やお年玉についての話をしたり、やり取りをしました。接続詞Ifを使用させながら単純未来のwillの文をまずは使わせていきます。
T: How was your winter vacation?
S: Yes.
T: Did you get otoshidama?
S: Sure!
T: Let's ask "Did you get otoshidama? How much money did you get?" to your partner. If you don't want to tell it, you don't have to do it. Just say "It's a secret."
S: 生徒同士でやり取り
T: OK. Can I ask someone? Did you get otoshidama, S1?
S1: Yes. I got 23,000 yen.
T: Wow! If you use it, what will you buy?
S1: If I use otoshidama, I will buy basketball shoes. I want to practice basketball with my brother.
T: I see. How about you, S2?
S2: If I use otoshidama, I will buy new shoes.
T: Why do you want to buy them?
S2: Because it became very old.
T: Then if you get new shoes, what will you do?
S2: If I get new shoes, I will go to the shopping mall.
(S-S Interaction→T-S Interactionで出た下線の英文を板書する)
T: Thank you, everyone. I was really glad to know that you enjoyed your winter vacation! But now, I was really sad because I had to give a lot of money to my children and relatives. If I were a junior high school student, I could get otoshidama.
(下線の文をさらに板書して追記する)
指導の流れ②(Interactive Teacher Talk)
さらに次の段階へ進みました。文科省のBridgeの内容のSuper Robotにつなぐために、以下のようにInteractive Teacher Talkで展開。
T: In the next lesson, we're going to read a speech script about super robots. What is the most popular japanese robot anime?
Ss: Gundam...Evangelion...Doraemon...Atom...Shinkalion...
T: Oh, Doraemon! Why is he special?
S: He has a Yojigen Pocket.
T: That's true. If you had Doraemon's special pocket, which item would you get?
S: ....
T: If I had his pocket, I would get Time Tunnel. Do you know it? If I got Time Tunnel, I would go back to 1970s. Why? My grandfather died before I was born. So, if I went back to 1970s, I could meet my grandfather.
(下線の文をさらに板書して追記する)
指導の流れ③(気づきのシェアと文法説明)
このような流れで、次の板書が完成しました。
見てわかるように、横線を1本描いています。文法指導において最も大切にしていることは以下のとおり。
- 横線の上下を見比べながら、意味や用法について気づいたことを話し合う
- 気づいたことのシェア
- 生徒の言葉を拾い、最大限に生かしながら、板書しつつ文法説明
文脈のある中で何度かやり取りをしているからこそ、用法や機能、使用場面などに意識が働き、さまざまな気づきが生まれやすいと思います。
指導の流れ④(追加の文法説明)
さらに、黒板の右端にあるように、「なぜ仮定法では過去形を使うのか?」ということを豆知識として伝えました。
ここで説明したのは、「過去形=遠い形」という呼び名から分かるように、対象からの距離が生まれるからこそ「過去」「丁寧」「非現実」を表すことができるのだということです。多くの生徒にとって、驚きだったようでした。(これは、僕が浪人時代に代ゼミの講師の先生から教わったのが初めで、当時の僕にとっては目からウロコが出るほどの衝撃でした。もっと英語を学びたい!と思って、大学は文学部に進学して、英語を学ぶ喜びに浸るのですが、それはまた別の話…。)
指導の流れ⑤(S-S Interaction→T-S Interaction)
この後の展開は以下のとおり。
- ペアを変えて、"If you had Doraemon's pocket, what would you do?"というテーマでやり取り
- 何人かの生徒を指名し、教師とのやり取りして全体共有
- 内容を深めたり、誤りへのフィードバックを行い、内容面と言語面の充実を図る
指導の流れ⑥(次の時間)
次の時間は、新たなインプットとして文科省のBridgeのSuper Robotを用いて、仮定法の表現に触れたり、実際に使ってみる機会をもちました。他にも仮定法を使用できる題材がBridgeにはいくつか含まれているので、どんどん活用してみようと思います。
文法指導のイメージ
以上の展開は、活動の中で文脈のある英文にできる限り触れさせながら、「生徒の気づき」を大切にしながら文法指導する意図で構成しました。
今回の授業の流れは、この国立教育政策研究所のYouTubeビデオの展開をもとにしていますので、ご覧になるとイメージしやすいかとおもいます。
参考資料
平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査 中学校 英語 調査結果を踏まえた学習指導の改善・充実に関する指導事例 - YouTube