この数年は、テキストタイプを意識したリーディング指導方法を模索しています。ねらいとしては大きくは以下の2点です。
- 生徒がどんな英文も自力で読み進めることができるようにしたい。
- テキストタイプを意識した読み方を高めることで、読み手にとって理解しやすい文章を書く力に繋げたい。
この実践記録は、まとまりのある英文を読み始める中2の4月で行った指導です。今回は特に「物語文(日記)」のテキストタイプを意識したリーディング指導の方法を考えました。生徒に提示した「物語文(日記)」の読み方は以下のとおりです。
①何について書かれた文章なのかを考えよう。
②時間を示す表現に気をつけて、どんな出来事が起きたか整理しよう。
③書き手の気持ちや周囲の人や物との関わりを考えてみよう。
授業の流れ(約2時間)
《海斗がクラスで春休みの思い出スピーチをする場面。前時に、ALTが海斗のスピーチをモデルに春休みの思い出スピーチをしてもらっています。》
- (開本せず)海斗のスピーチを聞き、ALTの先生のスピーチとの共通点を確認する。
- 「時を表す表現」があること、「時系列に並んでいること」に気づかせ、日記や思い出について書かれた文章の多くはそのようなパターンになっていると伝える。
- 日記のテキストを読むときに意識すべきことを伝える。※板書の左側
- 開本をして、時を表す表現を探し、本文に⚪︎をするよう指示する。→個人→グループ→全体共有
- 思考ツール(グラフィックオーガナイザー)に、それらの時を表す表現を引用させる(日本語メモさせる)。
- 時間ごとの「出来事」が分かる文(=トピックセンテンス)を探して、テキストに下線させる。→個人→グループ→全体共有
- 難しい英文を正しく読むための方法を指導する。
- トピックセンテンスについて、7の方法で理解する。
- 思考ツール(グラフィックオーガナイザー)に、時間ごとの出来事について分かったことを引用したり、自分の言葉でまとめる。→個人→グループ→全体共有
- ③のステップを再度確認し、思考ツール(グラフィックオーガナイザー)に読み取ったことを引用したり、自分の言葉でまとめる。(理解が難しい文については、7の方法で読み進める)→個人→グループ→全体共有
- メモをもとに、読んで理解した内容についてリテリング
- (中間指導①)分かりやすく伝えるために意識することを確認→「日記」の読み方と同様のポイントを生徒から引き出し、「読み」の時だけでなく「伝える」時にも有効だと気づかせたい。
- (中間指導②)読めない単語やうまく言えなかった表現を解消し、よりよく伝えるためにデジタル教科書で個別に音読練習をさせる。目的意識をもった音読練習に繋げる。
- 再度リテリングに取り組み、パフォーマンスの改善を目指す。
工夫・意識していること
- 手順1〜6はトップダウン処理で全体を掴み、予測しながら読むことができるように。
- 手順7〜8はボトムアップ処理で1文を正しく理解するためのスキルを高める。
- 初学者のためには、教師の読み方をまずは読み進めて追体験させたい。(中2の4月という、長文を読むことに慣れていない生徒たちには特に必要。)
- テキストタイプの判断は、だんだんと自分で必要に応じてできるように手を離していくべき。
- ボトムアップ・トップダウンを行ったり来たりしながら文章全体の内容理解をできるように両面をバランスよく育てていく。
ボトムアップ処理の指導について
- SV発見(主語は◻︎、動詞は二重線で下線をさせる)
- スラッシュを入れさせ、チャンク分け(初めは教師のスラッシュ分けを示しながら、だんだんと委ねていく)
- 語順表指差し分析(田尻悟郎先生の語順表、教科書本文をそれぞれで片手ずつで同時に指差しながら、チャンクごとの語順を分析させる)
語順表の扱いは、指導にかなり時間を要するので、中1の時から段階的に指導していくことが必要です。いきなりやると、混乱をきたして授業が成立しないと思います。中1でやり続けてやっと、1文を見て語順表の1か2のどちらかを判断できる生徒が増えてくるイメージなので、繰り返し粘り強く、語順表に触れさせる機会を作りました。
まとめ
最初にジャムボードに書かせた際は、あまりにも生徒のタイピングが進まずにかなり戸惑いました。中2といえども、この前まで音声中心で指導してきた中1だったわけで、まとまりのある長文を読むことを細かく指導することが欠けていたと反省しました。
そこで、テキストタイプを意識させながらトップダウン処理で大まかに読むことだけでなく、ボトムアップ処理で1文を正しく読む方法についても指導しました。生徒のジャムボードを比較して見ると、最初はなかなかジャムボードに情報を書けなかった生徒も、情報を整理しながら読むことができ始めているように思いました。
これからも様々なテキストタイプに出会うことになるので、最終的には生徒自身が読み方を判断し、自力で粘り強く読み、文章の概要、書き手の伝えたいことや必要な情報を掴むことができるように指導の改善に取り組んでいこうと思います。
参考資料
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-23520668/23520668seika.pdf
- 田尻悟郎先生の語順表
https://sc.benesse-gtec.com/tajiri/guidance/pdf/gojunhyo_jhs.pdf