English Classroom

中学3年間の英語の授業アイディア、英語教育についての考え・悩みを日々記録しています。

何のためのリテリングやPicture Describing?

この活動って何のため?

 Picture Describingやリテリングは授業中の活動として有名で、特に最近の中学校の指導でも流行っていると思うのですが、「なんで、この子たちはイラストについて説明してんだろう?」と、頑張っている生徒を見ながら、少し冷静な気持ちになってしまうことが多々あります。リテリングも同様です。そんなことは考えずに、「Picture Describingやリテリングができる」というスキルを習得することをシンプルに目標に掲げてやっていけばよいのでしょうが…。そんな思考に陥ってしまうのは僕だけ?

 そして、手段が目的化してしまいそうな気がしています。それができたら次はなにがあるのか?ということをもった上での指導なら良いのですが、流れ的にとか、スタンダード化しているからやる、ということになってはいけないとも思います。

 そこで、現在進行形について学ぶ単元で、少しでも生徒がPicture Describingをする必要感を感じてくれたらと工夫してみました。単元を通してFlipgridを使ってやってみました。

Flipgridって何?

 説明不要かもしれませんが、こちらのウェブサイトでまとめられているので紹介させていただきます。

 「授業で音読や暗唱をさせたいけど、授業時間を結構圧迫して困ってしまう…」という悩みって結構あると思うのですが、家庭学習で取り組ませてみるための解決策になると思います。

 何よりも、生徒にとって楽しい機能や、恥ずかしい気持ちを軽減するような機能がたくさんそろっています。全てウェブブラウザの中で動くため、特別なアプリも必要なく、教師にとっては生徒の頑張りをチェックするのも簡単です。

 教育用SNSということでトラブルが心配かと思いますが、生徒がアップロードしたものは教師の許可を経てクラス内に公開されるので、悪意のあるものは排除することができます。また、コメント機能、いいね機能なども教師の裁量で設定することができるので、非常に安心感は高いです。

毎時間の活動の工夫

 使用しているNew Horizon1 Unit8の教科書内容が次のようになっています。現在進行形を扱う単元です。

(Unit8-1) メグは海斗から電話があり、次の日に海斗の家で新作のテレビゲームを一緒にする約束をします。

(Unit8-2)次の日、海斗・朝美・ジョシュの3人は海斗の家でメグのサプライズ誕生パーティの準備をしています。

(Unit8-3)何も知らないメグがやってきて、サプライズ演出に大喜び。

ただ単にPicture Describingさせるのではなく、教科書の内容を活かしてこんな風に設定をしました。

(Unit8-1)とある計画を企んでいるジョシュは、メグの行動を知りたがっています。ジョシュは、探偵のあなたにメグが何をしているのかを調査するよう依頼をしました。ビデオメッセージで報告しましょう。

(Unit8-2)メグは、友人たちが何かを企んでいるのではないかと疑い始めました。メグは探偵のあなたに、3人の友人たちが何をしているのかを調査するよう依頼しました。ビデオメッセージで報告しましょう。

(Unit8-3)コロナ禍にもかかわらず、生徒たちが何かイベントを開こうとしているようです。先生が探偵のあなたに、4人の生徒たちが何をしているのかを調査するよう依頼しました。ビデオメッセージで報告しましょう。

授業で練習をした成果を、休み時間もしくは家庭から投稿させます。また、次時の冒頭では成果確認として全体の前で数名に披露してもらいました。

単元末の活動

 ここまでの活動の成果として、週末に何をして過ごしているかを実況しながら動画で投稿させました。

  • 単なる動画でなく、「ショート動画」を投稿するよう指示(それだけで生徒の目が輝きました!)
  • 自分自身のこと、家族、ペットなど誰についての投稿でもオッケー
  • プライバシーには注意して、必要に応じて背景やスタンプを使うこと
  • Flipgridのトピック内にモデルの例文を記載
  • Flipgridのトピック内に、先生のショート動画で堂々とモデルを示す

ちなみにこのような画面で表示されます。

(トピック一覧)

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(トピック内容)

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生徒の作品

 生徒たちの作品を見ていただけないのは残念ですが、想像以上に生徒たちは本気で取り組んでくれました。例えば…

  • 家族のやっていることを現在形と現在進行形を使い分けながら紹介(なんと、顔出しで出演してくれるご家族も多数!)
  • 趣味の時間の過ごし方を、自分の部屋案内を交えながら紹介
  • 1日の過ごし方を、わざわざ動画編集ソフトで何時間もかけてガチ編集して投稿

正直なところ、「生徒たちは恥ずかしくて、プライベートなんて誰も投稿してくれないだろうな…」と思っていました。しかし、子どもたちは予想に反してたくさんの投稿をしてくれました。それには以下の要因があるように思います。

  1. 現代の子どもたちの自分について発信することへの興味関心
  2. ショート動画のブームとFlipgridの類似性
  3. 教師自ら、生徒に求めたいレベルの作品を投稿

3については、生徒たちに聞いてみると、「撮影の際のモデルになった」、「自分たちもやってみる気になった!」と言っていました。教師も生徒に対して心を開放することの大切さを改めて感じました。

それについては、過去記事もあります。

まとめ

 しっかり目的や場面状況の設定をすることで、単なるPicture Describingやリテリングの活動を、無機質なもので終わらせることなく、生き生きと活動させることができると実感しました。

 ただし、今回のような設定がいつも可能ではなく、どうしてもPicture Describingやリテリング自体をスキルトレーニングとしてやっていくこともあると思います。ただ、ラウンド制の授業を取り入れたりしていて、「ここはリテリングをさせるラウンド」と機械的に考えて授業を流してしまうこともありえないか?と危惧しているところです。スキルトレーニングの先に何を目指しているのか?を明確にして生徒と目標を共有しながら、彼らがが英語を使う必然性を最大限に感じることができる工夫をしていきたいです。