英語で詩を書くことに挑戦しました。前回の記事はこちらです。
今回は、Christina Rossettiの詩を使って、英詩を鑑賞する楽しさを感じてもらうための実践です。
詩を選択するポイント
僕が大学で感じさせてもらった、英詩を鑑賞する楽しさを、どうやったら中学生の子どもたちにも体感してもらえるのかを一番に考えました。その時の条件として、次のように考えました。
- 文学史に残る詩人のホンモノの作品であること
- 短め、かつ簡単な表現で構成された英詩であること
- リフレインや音韻などの詩の特徴があること
- 読んだときに、ひっかかる部分があること(疑問が浮かぶ)
- 理解できた時に、頭の中にイメージが鮮明に浮かぶ詩であること
実際に英詩を読んでみる
そのような意味で、選んだのはChristina Rossettiの次の詩です。
White sheep, white sheep,
On a blue hill,
When the wind stops
You all stand still.
When the wind blows
You walk away slow.
White sheep, white sheep,
Where do you go?
読んでみると、頭の中に次のようなイメージが広がると思います。
さらに、じっくり読んでいると"On a blue hill"という表現が気になります。ここから、なぜRossettiは"blue"という表現を使ったのかを考えることになります。
英語でも、日本語と同じように「青」を「緑」と同じように使うことがあるのだろうか?もしそうであれば、もっと草原の色は鮮やかで生き生きとしたこんな感じかも…。
さらに、しばらく考えるうちに、草原は青くないけど、"blue"といえば、「空の色」なんだけど、何か関係があるのかなぁ?きっと頭の中にはこんなイメージが浮かぶはずです。
その瞬間、何かがひらめくはずです。フワフワとした雲は、羊のようにも見える。Rossettiは「草原の羊たち」と、「青空に浮かぶ雲」を重ねたのではないか?当時の彼女は、こんな情景を見てこの詩を書いではないか?
その証拠に、この詩のタイトルは"Clouds"なのです。
授業での生徒たちの様子
こんな思考の流れを生むための最大の工夫は、この詩のタイトルを明かさずに読ませるということです。その上で、次のようなワークシートを与えて、詩人になったつもりで訳してみる課題を与えました。
普段の授業では、日本語訳をさせることがあまりないので、逆に新鮮なようでした。友達と相談しながら作業をして、それぞれに工夫していました。さらに、疑問点などもあげさせながら、タイトルは何かを考えさせていると、あるグループから、「あっ!!!」とか「きゃ〜、それすごい!」などと歓声が聞こえていました。急いで近づいて聞いてみると、この詩のイメージに自力でたどり着いたようです。英語があんまり得意でなく、普段は苦労している生徒が、「雲」というタイトルになる理由を、誇らしげに語ってくれました。いつもより生き生きと輝いて見えました。
ついに、全体でその解釈を共有し、種明かしをします。生徒たちが納得して、頭にイメージができたら、詩を朗読してあげます。そして、次にプリントを配布して、Rossettiについて解説しました。
英語通信の活用
次の時間には、生徒たちの意見をまとめた英語通信を発行して、授業で振り返りました。
この中で触れていますが、日本語のリズム(5・7)を意識しながら訳している生徒や、この詩に「死のイメージ」を感じた生徒までいました。生徒は想像以上の発想力、感受性をもっていることに感動すら覚えました。
まとめ
こんなふうにして、英詩の鑑賞の授業を行いました。生徒の感じた「死のイメージ」は、実際に関連があるのだろうか気になります。また、日本語では、緑を「青々とした」などと表現したりするけれど、英語のblueにそんなイメージがあるのだろうか気になります。ネットを探っていると、次の記事を発見しましたが、どうなのでしょう。
このように、英詩を読むと、いろんな疑問が湧いてきて、好奇心がくすぐられます。僕自身は、大学で少しかじっただけで、センスもありませんが、英詩を読むのが好きになったことは確かです。僕の生徒たちにも、少しは英詩を読む楽しさが伝えられたのではないかと思っています。
そしてついに、次の時間からは英詩を書き始めます。それについては、次回の記事でまとめたいと思います。